こんにちは。いつもお読み頂きありがとうございます。
今回は、【 ブロックチェーンやICOが(既存の)世界を破壊する!? 】というテーマでお話します。
先日、札幌で行われたNo Mapsというクリエイティブに関連した様々な催し物を行うイベントの1つ、「ブロックチェーンがもたらす未来」に参加したのですが、そこで出てきた話は非常に興味深いものでした。
(怪しい案件も含めて)仮想通貨に関するセミナーはよく見かけますが、「ブロックチェーンについて」のセミナーは珍しいですし、行政が主催ということもあり内容も新鮮なものが多かったのでここでも共有したいと思います。具体的には、「ブロックチェーンによって具体的に何が出来るのか」「ICOは単なるお金集めではない」といった話がなされました。
「No Maps」及び「ブロックチェーンがもたらす未来」について
まずはイベント自体の紹介をします。
「No Maps」とは
No Mapsとは「Sapporo Creative Convention」というテーマのもと、「会議」「展示」「興行」「交流」「実験」といった事業を実施する無料~有料の複合型のイベントです。
2017年は10月5日(木)~15日(日)の期間で、アスティ45、わくわくホリデーホール、札幌駅前通地下歩行空間(チカホ)、青少年科学館、狸小路周辺など札幌市の各施設で行われます。
国際短編映画祭やライブのイメージが強いですが、広い意味で「クリエイター」のためのイベントであり、札幌で国内初のローンチをしたシェアサイクルのサービス「Mobike」の展示なども行われています。
アスティ45では「ビジネス」に関連したセミナー形式のイベントが多々行われていました。
私は「ブロックチェーンがもたらす未来」の他に、youtuberの会社UUUMの方々が登壇する「北海道でYouTuber施策やってみた!」などにも参加しました。
「ブロックチェーンがもたらす未来」について
経済産業省北海道経済産業局が主催となり、ブロックチェーン技術の理解を深め開発促進や新ビジネス創出の可能性を見いだすことが目的の会です。
二部制に分かれ一部目では講師として下記の2名が事業説明からブロックチェーンやICOに関するお話をされました。
・「SIVIRA」他数社の共同設立者やCEOを務める篠原 ヒロ(篠原裕幸)さん
・(株)グラコネ代表取締役 や ビットコイン寄付プラットフォーム KIZUNA の創業者である藤本 真衣さん
二部目はパネルディスカッション形式で、司会をデロイトトーマツベンチャーサポート株式会社の大平 貴久さん、パネラーを上記2名にOmiseGO ビジネスデベロップメントマネージャーの柿澤 仁さんを加えた3名の、計4名でのトークが行われました。
イベントの紹介が済んだところで本題に入っていきます。
ICOが破壊するもの
まず、ICOとは「Initial Coin Offering」の略で、取引所に新規の仮想通貨が上場され一般的な売買がされる前に、先行者利益として安く買えることなどをウリとして限定販売を行い資金調達をすることです。
未上場の会社が証券取引所に株式を公開し投資家に取得してもらうIPOになぞらえてこの名前で呼ばれます。ちなみにIPOとは「Initial Public Offering(最初の 公にされる 売り出しもの)」の略です。
ではこのICOが何を破壊するかというと、「出資」や「寄付」の形や概念 です。
例えば、ある国で災害が発生し困っているので寄付を募集したとします。
「10万円寄付してください」と言われて見返りを求めずポンと払う人はどれくらいいるでしょうか。恐らくかなり少ないはずです。
では5万円ではどうでしょう。こちらもまだまだ少ないでしょう。
これが仮に100円、10円ではどうでしょうか。かなり寄付する人は増えると思います。そしてそこに見返りを求める人も少ないでしょう。
一般的にお金を出す代わりに何らかの見返りを要求や期待をするのが出資で、お金だけを出す場合は寄付です。
一人の人間から高額を集めるのは難しいですが、大人数から少額を集めることはそれに比べたらハードルが下がります。
また、法定通貨(日本の円など硬貨やお札)で海外送金を行う場合、高い手数料がかかるという問題があります。数千円を送るのに数千円かかってしまうのです。
海外送金にかかる金額を計算してくれるシュミレーターのサービスをサイトで行っている銀行があるので試してみるとわかりますが、5,000円分送ろうとしたら手数料だけで約5,000円かかります。
これらの問題や課題が仮想通貨だとかなり減らせます。
手数料も安く済ませられ、デバイスさえあればより多くの人間から少額を集めることができます。
また、中間搾取を避けられるといったメリットや、第三者の手に渡ってしまい目的の相手に届かない、届くまでの時間がかかるといった問題もクリアできます。更にはその寄付を募った人や国が将来恩返しをするといった、寄付が出資になる可能性すらありえます。
現在、世界各地で流行っているICOは投機的な面が強く「今買えば1年後に○倍になる!」と言って買わせた後に上場せずに逃げてしまう詐欺も横行しています。そのため中国ではICOは禁止になり、シンガポールやアメリカでも規制されています。
しかし上記の例の様に、社会的に意義のある活動をしようとした時、既存の方法よりも資金も含め「応援したい人」を集めやすくなるのがICOの力であり、これからの時代は社会的価値の高い活動をしているかどうかが見られていく、これが「ICOが今の世界を破壊する」という意味です。
ブロックチェーンが破壊するもの
続いてブロックチェーンの方に話を移しましょう。
まずブロックチェーンとは『分散型台帳技術』と訳される、「スマートコントラクト(その仕組みを使う際の約束事)」「偽造や改ざん防止」「P2Pネットワーク」「コンセンサスアルゴリズム(その仕組みを使うメンバーでの監視、管理)」といった要素を持つ技術のことです。
あまり深い技術的な話はできないので会社での情報管理を例にした以下の図でイメージしてもらえればと思います。
関わる人や組織が増えるほど情報の取扱い方は複雑化、細分化していきます。その結果、各々が独自の管理をしてしまい、いざ共有や修正をしようとした時にトラブルが起きたり時間を要してしまいます。
これがブロックチェーンを使うことで情報共有や連携が簡単になり、また変更や修正を加える時には使用者の同意によって行われるために悪用も防げます。また、複数の場所で同じデータが存在するため第3者による偽造や改ざんもできない仕組みとなっています。
この技術を採用している仮想通貨のビットコインが有名になったために同じものと考えている人もいますが、実際は異なります。
Airbnb(エアビーアンドビー)にTOYOTA(トヨタ)などもブロックチェーンを導入している
「民泊(ホテルや民宿などの宿泊施設ではなく個人の民家に泊まること)」という存在を一気に広めたAirbnb(エアビーアンドビー)や、自動車メーカーの最大手TOYOTA(トヨタ)などもブロックチェーンの導入に着手しています。
これは単に、支払い方法にビットコインを加えるといった単純な話ではありません。
どちらの企業も持っているのは「顧客の信頼データ」です。
Airbnbであれば「いつどこに誰が誰を何日間泊めて評価はどうだったか」といった宿泊に関するデータがあり、
トヨタには「走行距離や場所、燃費、運転の仕方」などの走行データがあります。
ブロックチェーンを上手く活用できれば、より信頼性の高いデータを集めることができ、シェアリングエコノミー、保険、データ自体の売買など今まで他所が行っていた新たな市場も自分達で開拓していくことができます(一部は既に行われています)。
「近い将来ロボットに仕事の多くが奪われる」という話が度々上がりますが、ブロックチェーンにより既にその片鱗が見えてきています。
つまり、今まであった仕事やその在り方が「ブロックチェーンにより破壊されている」のです。
ブロックチェーンやICOで生まれるM2M(モノとモノ)との仕事や取引
ビジネスにおける取引方法として
B2B(BtoB:Business-to-business):企業間取引
B2C(BtoC:Business-to-Customer):企業消費者間取引
といった形態があります。
また近年では、インターネットの普及によりヤフオクやメリカリなどでの
C2C(CtoC:Customer-to-Customer):個人間取引
も盛んになってきました。
しかし、インターネットにより生まれる取引はこれに留まりません。
更に時代が進むと
H2M(HtoM:Human-to-Machine):人とモノの間での取引
M2M(MtoM:Machine-to-Machine):モノとモノの間での取引
(※現在は機械間の情報交換及びコントロールの意味で使われています)
が行われる時代がやってきます。
IoT(物のインターネット)によりネット接続されるモノの数は300億以上になる
総務省の平成28年度版情報通信白書によると、インターネットにつながるモノ(デバイス)の数は2020年には304億を超えると予想されています(もっと多く500億近くになるという推測を出している人もいます)。
一方で、人間がスマホやタブレット、PCなどでインターネットに接続する数が21億と言われ、総数の約9%ほどです。
今後、技術が発展し市場として成熟した場合、M2Mの方が圧倒的に大きくなるのです。
そこで使われるのがICOによる仮想通貨でありブロックチェーンになります。
IDoT(Identity of Things):物のアイデンティ という概念が既にある
何百億ものデバイスがインターネットに接続すると、情報の伝達、処理、保持、あるいはハッキングやクラッキングなど様々な課題や問題が出てきます。
実はこれらの問題に関連した、『なりすまし』や『データ改ざん』を防ぐために『IDによる物の識別=アイデンティ』といった『IDoT(Identity of Things):物のアイデンティ』 という概念が既にあり、関連企業(例、Micro Focus社及び関連企業のNetIQ社)や団体(例、非営利活動法人クラウドセキュリティアライアンス:Cloud Security Alliance:CSA)も存在しています。
この市場も今後ますます需要が高まると予測されています。
インターネット以外でのブロックチェーン利用も行われてきている
Blockstream(ブロックストリーム)社が衛星にビットコインのブロックチェーンノード(プログラム)を組み込み、インターネットがなくても衛星による信号の通信で利用が可能になるように進めています。
この他にも保険や医療など様々な分野でブロックチェーンの活用が進められています。
例えば今回のイベントで講師をした篠原 ヒロさんは「交際・結婚の記録をブロックチェーンに書き込める」という「SoulGem(ソウルジェム)」というアプリをIOSで出しています。
例えば国が認めない同性のカップルであっても、改ざんされない記録が残せるというものです。面白い発想ですね。
ブロックチェーンやICOが今の世界を破壊する!?:まとめ
まとめるとブロックチェーンやICOが破壊するのは「既存の仕組みや価値観」ということでした。
そしてこの流れは想像以上に早く広がってきています。
しかし、イベント内で「この中で仮想通貨を持っている人はいますか?」という質問に対し、100名を超えて立ち見も出ている会場で手を挙げたのは10名足らずという状況を見て、まだまだ世間的には「興味はある」くらいの段階なのかなという気がします。
ただこの興味を持ってこういった場に参加すること自体に意義があると私は思います。
「これから流行るから仮想通貨を持とう」という短絡的な話ではなく、専門家の話を聞くなど情報を集め自身のビジネスに活かせるチャンスを見つける。こういった姿勢が今後大切になると思います。
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